デンタツトヘンヨウノニホンケンチクシ

伝達と変容の日本建築史

伝わるかたち/伝えるわざ
野村俊一 編
ISBN 978-4-585-35001-9 Cコード 1052
刊行年月 2022年7月 判型・製本 B5判・並製 216 頁
キーワード 建築,アーカイブズ,美術,文化史,日本史

定価:3,850円
(本体 3,500円) ポイント:105pt

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書籍の詳細
貴重な史資料が織りなす「かたち」と「わざ」の日本建築史

建築は多くの異なる部分が集合して全体が編成される。
組物や彫物、座敷飾りなどの実在の建築を成立させる「モノ」、あるいは、モノや人間とのさまざまな相関により拡がる「空間」。
時間や場所、文脈を超えながらそれぞれに取捨選択され、その組合せが多種の「かたち」を織りなすことで、豊かな建築の世界を創り出していった。
そして、この建築の「かたち」を繰り出し、伝えていくためには、大工技術や図面表記法をはじめとする、さまざまな「わざ」の工夫があった。
各地に残る建築の歴史に関わる諸種の資料は、これら「かたち」と「わざ」相互の反復運動が、時代とともに建築の歴史の一端を紡いでいったことを如実に示している。

日本建築史を彩る素晴らしい「かたち」と「わざ」の世界を、190点を超えるカラー図版とともに読み解く画期的な一冊

【第一部 伝わるかたち】
建築はさまざまな要素の組合せで成立している。
そして、この組合せが多種の「かたち」を織りなし、時間や場所や文脈を超えながら伝わった。
極彩色に彩られた組物、植物や動物に象られた彫物、建具や道具や絵画で設えられた空間、層塔や社殿や仏殿などの外観、裏や伽藍などの建造物群―。
各々の「かたち」がときに偶然に、ときに意図的に取捨選択され、再び新たな建築を生み出す端緒を開いたのである。
この部では、建築の部材、建築の空間、建築の外観へと徐々にスケールを大きくしながら、建築の豊かな「かたち」と個別の系譜を紐解いてみよう。

【第二部 伝えるわざ】
建築の「かたち」を伝えるための、さまざまな「わざ」の工夫があった。
「かたち」を繰り出す大工道具にとどまらず、特定の「かたち」に象られた部材そのもの、実物を縮小したミニチュア、「かたち」を二次元に表現した図面、空間を再現する起し絵図、「かたち」の仕組みや制作方法を記す書物、多様な空間を追体験する絵図―。
建築の情報を他者に伝え共有するため、観察・視覚・加工の技法が試行錯誤されてきたのである。
この部では、建築の情報を伝える道具とメディアを通して、さまざまな「わざ」の工夫と系譜を垣間見てみよう。

 

 

目次
[総論]
建築が伝わること/建築を伝えること 野村俊一

第一部 伝わるかたち
1 組物1……古代建築の組物とその変遷
2 組物2……中世 取捨選択される軒下
3 蟇股……伝播とかたどり
4 木鼻……伝わる繰形
5 仏の空間……密教・浄土の表現と伝播
6 障壁画……世界の表象と格式
7 座敷飾……飾りの編成
8 御所……追憶される平安宮
9 神社……神明造の差異と反復
10 伽藍……禅院の伽藍とその変容
11 大仏殿……東山大仏殿 豊臣政権の栄華とその記憶
12 層塔……層塔建築の系譜
13 楼閣……みることの欲望と制度

第二部 伝えるわざ
14 大工道具……工匠と技術・道具
15 小建築……小建築の造形
16 絵図1……図法と視点
17 絵図2……信仰と絵解き
18 図面1……建地割図の誕生と指図
19 図面2……近世の建地割図が果たした役割
20 図面3……仙台藩の建築絵図と伝えるわざ
21 大工文書……技術の表現とメディア
22 起し絵図……起し絵図の多彩な形式と機能

[小論]
1 日本建築における過去の継承と復古 加藤悠希
2 技術伝播・工匠・道具 海野 聡
3 伝統的な図面表現と建築の近世・近代 中村琢巳

[講演]
建築の情報はどのように伝わったのか 光井 渉

[資料]
巻末参考図版
 01 建築部材名称
 02 三手先隅組物の系譜
 03 組物の種類
 04 掲載作品分布図
掲載作品目録
参考文献一覧

あとがき 野村俊一
執筆者紹介
プロフィール

野村俊一(のむら・しゅんいち)
1975年生まれ。東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻准教授、博士(工学)。
(主要業績)『建築遺産 保存と再生の思考―災害・空間・歴史』(共編、東北大学出版会、2012年)、「黎明期の五山叢林とその建築・行事」(共著、小島毅監修・島尾新編『東アジア海域に漕ぎだす4 東アジアのなかの五山文化』東京大学出版会、2013年)、「『建長寺指図』と仏殿・法堂・衆寮」(共著、村井章介編『東アジアのなかの建長寺 宗教・政治・文化が交叉する禅の聖地』勉誠出版、2014年)などがある。

執筆者一覧(50音順)
赤澤真理―あかざわ・まり
海野聡―うんの・さとし
加藤悠希―かとう・ゆうき
是澤紀子―これさわ・のりこ
鈴木智大―すずき・ともひろ
登谷伸宏―とや・のぶひろ
中村琢巳―なかむら・たくみ
野村俊一―のむら・しゅんいち
西松秀記―にしまつ・ひでき
光井渉―みつい・わたる
米澤貴紀―よねざわ・たかのり

書評・関連書等

★書評・紹介★
「週刊読書人」(2022年10月7日、6面)に書評が掲載されました。
 →評者:中村泰朗氏(広島大学大学院人間社会科学研究科助教・日本建築史)
「建築技術」12月号(875号)(2022年11月17日)に紹介されました。

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