ヘリテックス イチ

HERITEX Vol.1

特集1 東アジアの宗教儀礼/特集2 バルテュスとその境界
名古屋大学文学研究科人類文化遺産テクスト学研究センター 編
ISBN 978-4-585-23221-6 Cコード 3030
刊行年月 2015年12月 判型・製本 B5判・並製 264 頁
キーワード 美術,文化史,民俗学,宗教

定価:1,980円
(本体 1,800円) ポイント:54pt

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書籍の詳細
人類にとってかけがえのない文化の遺産すべてをテクストとしてとらえ、その創造や意義をテクストとして読み解く―

アーカイブス・物質文化・視角文化の3つの視角を軸に、統合テクスト学の知見より人文学研究の新たなステージを示す。


特集1 東アジアの宗教儀礼
本特集は、 東アジアの宗教や信仰について、「 宗教儀礼におけるジェンダー」と「民俗」という観点から総合的に捉え直すものである。東アジアを一つの広域文化圏として捉え、その中で共有、または差異化される文化意識について、信仰・性(ジェンダー)・民俗知・宗教儀礼や民俗社会における時間や空間の認識の在り方をテーマに、研究分野を越えた国際的な学術視点より探求する。

特集2 バルテュスとその境界
バルテュス(本名:バルタザール・クロソフスキー)は、1908年2月29日にパリで生まれ、2001年に93歳でスイスのロシニエールで没した画家である。本特集では、バルテュス自身の内部に視線を向けるというよりも、むしろバルテュスと接する、あるいは微妙に重なる、さまざまな外部に光源を置いて「境界」を照らし出すことで、これまでにないバルテュス像を立体的に浮かび上がらせようと試みた。この画家はこれらの外部を援用することで、そのあいだに境界を作りだし、外部とのつかず離れずの絶妙な距離感を保ちながら、独自の絵画世界を展開していったのである。これらの境界と戯れていく際の手続きや感覚にこそ、彼の本質を垣間見ることができるように思われる。


*Vol.3以降につきましては、勉誠出版からの刊行はございません。
入手をご希望の方は、下記までお問い合わせください。

名古屋大学人文学研究科附属
人類文化遺産テクスト学研究センター
〒464-8601 名古屋市千種区不老町
TEL:052-789-3509(代表)
MAIL:nagoya.cht.archives@gmail.com (共有)

 

 

目次
『HERITEX』創刊の辞  
人類文化遺産のイメージ【アーカイヴス篇】聖徳太子信仰の記憶の場──宝物と図像テクスト  

◎特集1 東アジアの宗教儀礼
二次的自然と護符的な力──都と里山(北村結花 訳) ハルオ・シラネ
琉球列島の女性祭司における神と人 澤井真代
霊山と女性──ジェンダー宗教学からの再検討 小林奈央子
在日華僑の先祖祭祀、普度勝会の伝承と現在 松尾恒一
記憶される伝統──中国広西省北部トン族の火災をめぐる民俗表象 黄潔(中村貴・訳) 
日本民俗の時間観──陰陽道の民俗的展開を中心として 小池淳一

◎特集2 バルテュスとその境界
バルテュスとプッサン 栗田秀法
絵画における時空間操作──バルテュスの時間表現の検討のために 副田一穂
バルテュスが見たボナール──シャシー時代の裸婦を中心に 吉田映子
一体化をめざす絵画──バルテュスとクールベ、そして中国絵画 鈴木俊晴

◎テクスト研究の先端  
〈イタリア・ルネサンスの宗教空間と図像プログラム〉
ジョヴァンニ・ベッリーニとパラゴーネ──16世紀初頭の作品をめぐって 須網美由紀
パルマ、サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ聖堂の図像プログラムに関する一考─《子羊の犠牲》と《「知られざる神に」と刻まれた祭壇》の解釈を中心に 百合草真理子

〈アジアの宗教テクスト遺産『仏頂尊勝陀羅尼』探求〉
『仏頂尊勝陀羅尼』関連の新資料について 畝部俊也
法隆寺貝葉「仏頂尊勝陀羅尼」の研究──新出資料『大倭國法隆寺所蔵貝多羅梵経』等への展開 佐々木大樹

〈渋沢・クローデル賞本賞受賞記念講演〉
文化遺産の表象、19世紀における生成と変容──パリ、ノートル=ダム大聖堂の保存・修復を中心 泉美知子

◎CHT Letter
人類文化遺産テクスト学研究センター 構成員紹介
人類文化遺産調査研究報告
ヘレニズム時代の交易用アンフォラ 周藤芳幸
伊勢山中学校遺跡から出土した中世のニワトリの骨 新美倫子
宗教文献のアーカイヴス構築─奥三河花太夫所蔵文献の事例 松山由布子

人類文化遺産テクスト学研究センター 2014年度活動報告
アーカイヴス部門 阿部泰郎 
物質文化部門 周藤芳幸  
視覚文化部門 木俣元一  
刊行本の紹介  

欧文要旨 
執筆者紹介  
『HERITEX』要綱  
編集後記


『HERITEX』創刊の辞
 名古屋大学文学研究科は、2014年4月に附属研究機関として「人類文化遺産テクスト学研究センター」(以下、CHT)を設置した。これは、10年間にわたるCOE プログラム(21世紀COE「統合テクスト科学の構築」、グローバルCOE「テクスト布置の解釈学的研究と教育」)の成果を元に、その達成をより発展させ、未来の人文学を創成するための先端的、かつ国際的な研究拠点とするためのものである。
 人間の文化の所産は、あらゆる次元や位相において全てテクストとしてあらわされ、読みとられ(解釈され)るという共通認識が、テクスト学の探究のうえでもたらされた。それを更に人文学の社会的実践として、人類の文化遺産の価値や意義の発見と発信に向けて挑戦することが、本センターの(そして、ここに連なるであろう未来の人文学研究者全てにとっての)使命である。
 我々の人文学は、各専門分野毎に永い学問の歴史を蓄積し、その継承のうえに成り立っているが、同時に諸学の協同や絶えざる相互批判も怠ってはならない。更にその成果を常に社会に還元し、社会からの問いかけを受けとめることのできる開かれた場であることも求められる。それと共に、世界的な視野と研究水準を保ち、一方で地域と人間の営みに根ざす、往還運動をも心がけねばなるまい。すなわち、人文学における国際的先端研究拠点の構築と、新たな学術領域の創成が本センターの活動に期されている。その実現を支えるのは、学内はもとより、国内外の諸大学や研究機関、ひいては研究者個人との連携及びネットワーク化に他ならず、そのための、ささやかなフォーラムとして機能することが望みである。
 人類が創出した文化の遺産にとって直面する脅威は、自然災害や社会の変化により消滅し、更には人為や戦争によって破壊され、或いは忘却の彼方に去ってしまうことである。危機に頻するこれらの遺産をいかに護り、救いだすか、それらの遺産こそ唯一無二のよりどころである研究者にとっての喫緊の課題であろう。それらの、いまだ知られざる価値や意味の文脈を明らめ、記憶し、伝承する力を正しく評価することこそ、テクスト学の真価を発揮する絶好の機会となろう。同時に、テクスト解釈により絶対化や正当化をはかり、暴力に加担する危うさに警鐘を鳴らすのも、テクスト学の役割ではなかろうか。
 CHT 設立より一年余の活動は、学内での公開セミナー、公開講演会、海外での国際ワークショップや国際研究集会の開催など数多く、連携する諸機関や各種プロジェクトとの共催を含めれば更に厖大な数に及んでいる。本センター自体の活動基盤としては、日本学術振興会科学研究費助成・基盤研究(S)「宗教テクスト遺産の探査と綜合的研究─人文学アーカイヴス・ネットワークの構築」(研究代表者:阿部泰郎)と同基盤研究(A)「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」(研究代表者:周藤芳幸)に支えられ、推進するところであり、それらのまさしく基盤的な多方面にわたる調査研究活動とフィールドワーク、それらを土台とした領域融合的な学術研究交流を活発に始めている。その中から、既に幾つもの国際的な共同研究プロジェクトや人間文化研究機構など諸研究機関との学際的研究・展示プロジェクトなどが走り出している。それらの実現に向けて、各研究対象のアーカイヴス化や研究ネットワークの構築を担うと共に、その成果を広く、学界や社会に発信していくことが重要な責務である。その媒体となるべく、本センターの編集による本誌『HERITEX』の創刊を企てた。ここには、CHT が主体となった上記の諸研究活動の成果を収めると共に、関連・連携する諸機関や研究者の人類文化遺産をめぐるさまざまな調査や発見についての速報を広く紹介していく予定である。本巻を創刊号として年一回の刊行を期すが、研究の進展に応じて、不断の変化を厭わず改善していきたい。その点、皆様の御批正とお力添えをお願いする。幸い、一般に入手可能なかたちでの公刊を勉誠出版にお引き受けいただいた。英断に感謝すると共に、本誌を通して未知の遺産と探査する人々との出会いを心から希っている。

人類文化遺産テクスト学研究センター
センター長 阿部泰郎

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