藤原俊成の薫陶を受け、和歌史に新風を吹き込んだ九条家歌壇。
その中枢を担う九条良経、慈円の自歌合を全注釈。
双方ともに俊成による判詞を有し、
新古今集へと至る中世和歌の基盤となった俊成歌論の精髄が展開されている。
和歌史、歌論史における貴重資料を、韻文・散文研究双方の視角より注解し、
日本文化史上におけるメルクマールとして位置づける。
※九条(藤原)良経(1169~1206)
鎌倉初期の廷臣・歌人。九条兼実の子。後京極殿と呼ばれる。和歌を俊成・定家に学び、清澄高雅な歌風をもって後鳥羽院歌壇の主要歌人となる。
※慈円 (1155~1225)
鎌倉初期の天台宗の僧。関白藤原忠通の子。九条兼実の弟。諡は慈鎮。四度、天台座主となり、歌人としても名をなした。著作に「愚管抄」、家集に「拾玉集」など。
※自歌合(じかあわせ)
自らの詠歌を左右に番えて歌合形式にしたもの。中世においては、文芸意識の高揚を背景に、秀歌を結番し、当時の歌壇指導者に加判を仰ぐ秀歌撰的性格を有する。