大江健三郎、遠藤周作が絶賛し、日本国内のみならずフランスを中心にヨーロッパで激賞されノーベル賞候補作にもなった名作が現代に甦る。
ノーベル賞候補作にも挙げられ、フランスをはじめヨーロッパ各国で高い評価を受けた代表作を、著者自身が最後に校閲した最良のテキストを用いて復刊。国内のみならず、パリでの評判が理解できる現地紙の書評・解説から、仏語化の経緯を詳しく記したダヴッド社版文庫本掲載の「あとがき」、親交の深い作家・大江健三郎と遠藤周作による芹沢文学論と、最新の年譜を付す。
(あらすじ)
1920年代の美しい巴里。
夫に伴われた留学先で、伸子は愛する娘を恵まれながら、結核に倒れる。
母亡き後の娘を憂い、伸子は闘病の日々を三冊のノートに綴る。
夫のかつての恋人を知り、嫉妬する伸子。優しい夫に相応しい、知的で自立する女性になろうと精進する伸子。子供を身ごもり、命と引き替えにしても産み育てようと決意する伸子。そして、厳しい療養生活の中で、別れて暮らす娘の成長を祈る伸子。
20年後、結婚した娘は母の遺した記録を読む。娘は「ポーブル・ママン」(おいたわしいお母様)と、母の願ったような女性になろうと思う。
不幸な運命の淵にあって告白された、愛と知の苦悩の内に成長した女性の悲しく美しい魂の記録。