地名は、祖先の生活の痕跡を残す貴重な文化遺産である
奈良県の大小さまざまの古代地名をとりあげ、地名の起源・伝承過程について、克明に解き明かす。
地名は古くから土地に定着して残存することから、地名の分布・移動する実態をみると、文化の移動が理解される。地名は考古学の出土資料と同等の価値をもつといっても過言ではない。しかし、考古学的遺物と同様、地名も発生以来、永い歳月のために、転訛・用字の変化を重ねてきた事実がある。したがって、地名という学問は、全国地名の収集・整理・比較・編年・正書法などの研究を積み重ね、体系化、理論化することから新しい視野が広がるという地道な学問である。(本文より)