世界に誇る大長編・大傑作の完全版を初公開!
明治・大正・昭和の激動の世紀を、日本人はいかに苦難と苦悩の道を歩み、希望をつないできたか。時代の証言として描く近代史。
序章となる本巻では、主人公・森次郎の誕生から、幼い頃の日々を描く。叔父・史郎の死を遠因に信仰に目覚め、全財産を捧げた父・常造は、母・兄とともに伝道師となり村を出る。残された次郎は、祖父母と2人の若い叔母と5人、苦しい生活を送ることになるが、貧困・悲哀・孤独は、次郎に幼い内から「人生とは何か?」について考えさせることになる…。
*本巻「人間の運命1 次郎の生いたち―序巻」は、新潮社版『芹澤光治良作品集』第七巻「海に鳴る碑/愛と知と悲しみと」(昭49・2刊)所収の「海に鳴る碑」の著者訂正本を底本にしている。その目次頁に〈次郎の生いたち 改題〉、〈「人間の運命」第一巻とする〉と書き入れがある。また、タイトル頁には〈海に鳴る碑〉を消して、〈人間の運命 序章〉〈次郎の誕生と幼年時代〉とある。本巻ではこれらを参考に、全体の構成から巻名を定めた。なお、作品末尾に〈一九八五年八月十日 三度目の訂正 於山小屋〉とあり、丁寧に作品が点検されたことと、軽井沢の別荘で最終作業を終えたことが判る。【編集付記より抜粋】