上代日本の阿弥陀信仰は如何なるものであったか
西方極楽浄土への往生を説く浄土教・阿弥陀信仰は、日本仏教の展開において看過することのできない大きな位置を占めている。
しかし、平安時代以降の研究に比して、奈良時代における阿弥陀信仰の研究は、その史料的制約からも未解決な問題が多く、なお検討の余地を残している。
本書では、政界・仏教界双方に影響力を有した光明皇后の阿弥陀信仰を中心に考察し、奈良時代における阿弥陀如来像の機能や特質をその形態の比較から位置づける。また、当時の法会における法具や経典に着目することにより宗教的・思想的背景を論じ、これまで日本浄土教受容史上の定説とされてきた井上光貞の論を再検討することで、奈良時代における阿弥陀信仰の実相とその歴史的意義、そして東アジア仏教文化圏におけるその特質を明らかにする。