世界に誇る大長編・大傑作の完全版を初公開!
明治・大正・昭和の激動の世紀に、日本人はいかに苦難と苦悩の道を歩み、希望をつないできたか。時代の証言として描く近代精神史。
昭和20年暮、占領軍統治下の廃墟と化した東京に戻る。
衣食住物資のすべてが欠乏、人心も荒廃、政治も社会も混乱と不安が充満するなか、占領政策の日本国再編成により社会は劇的変貌をとげてゆく。
*本巻「人間の運命15 再会」は、新潮社版『人間の運命』第三部第二巻「再会」(昭43・11初版、昭47・10、13刷)の著者訂正本を底本とし、やはり著者の校閲した新潮文庫版『人間の運命(七)』(昭51・4刊)を参照した。著者訂正本の第十四章末尾の余白に「一九八五年十月」と書き込みがあり、この時期に推敲したと考えられる。また、そこには以下のようなメモ(本巻口絵参照)が書き込まれている。
「再会」はこれでとどめる。題も「再会」ではなくて「敗戦」と改題すべきだ。そして第三巻に「再会」を開くべきだ
このメモは、一度「×」印で削除した後に、「イキ」と再指示されている。著者の意図するところは、本巻を第十四章までとし、続く「終章」を削除することであり、本巻はそれに従った。「第三巻」は、『人間の運命』第三部第三巻のことで、続く新潮社版『遠ざかった明日』(昭47・1刊)を念頭にしている。なお、このメモの内容を活かすならば、本巻15の題名を「敗戦」、次巻16の題名を「再会」にすべきかも知れない。しかし、1巻「海に鳴る碑」を「次郎の生いたち」、2巻「父と子」を「親と子」としたような明確な指示がないことから、原題のままとした。また、元版に付けられた「あとがき」は、「人間の運命 別巻2」に収録する。(勝呂奏)