南方熊楠の「知」と「情」の源流を探る
南方熊楠が生涯をかけて凝視しつづけたのは、森羅万象の生命力のもつ不可思議さであった。
幼時からアジアを包みこむ視野をもつ『和漢三才図会』の天地に分け入り、さらに西方世界にも開かれた唐代中国の『酉陽雑俎』を縦横に読みとき、古代インドの苦悩を塗りこめた大蔵経の行間を鋭く切り裂いてみせ、それらに通底して持続する男女の営みにも視線をそそいだ。
アメリカ、イギリスでの十数年の放浪と、西洋の学問への研鑽をへながらも、厖大な説話を集積した漢字世界の書物に晩年まで没頭していた南方熊楠。
その説話学の広野に足を踏み入れる探求者に捧げる一冊。