本書は、(一)引揚げや送還という帝国崩壊後の人の再移動を中心としながらも、それ以降の冷戦期の人の移動や残留あるいは定住、そしてグローバル期の人の移動までを射程に収めることとした。
また、(二)帝国拡大期における中心地と周辺をめぐっての移動とともに、帝国の周辺同士の移動の実態はどのようであったかにも関心を拡げた。
それに、(三)帝国内の人口移動と日本内地から北米・南米・アジアへの移民とどのように関連していたのか、(四)そのような人口移動を促進した移民政策や植民政策はどのように展開され、それぞれがどのように連関し、矛盾していたのかにも関心を拡げた。
さらに、(五)戦後の旧帝国圏において帝国形成に伴って移住した人びとが、戦後の引揚げ、残留、定着後の当該社会でどのように包摂されあるいは排除されていったのか課題ともした。
最後に、(六)二〇世紀の東アジアの近代化・帝国化のなかで、いわゆる日本人、朝鮮人、中国人、ロシア人などの東北アジア諸民族の人の移動をより大きな、総合的な視点からあきらかにすることを最終的な課題とした。