反発と融合を繰り返す、その交流の限界と可能性
摩擦と葛藤が絶えない今、日韓両国の研究者が、互いの文化交流の過去・現在を見つめ直すことで、新たな未来を志向する。前近代、戦前・戦中・戦後から、現代の「韓流ブーム」「K-pop」まで、越境する文化の「ハイブリッド化」を追う。
21世紀に入り日本では「韓流」や「華流」とよばれる、韓国や中国・台湾ほか中華圏の大衆文化への関心が高まっている。これらの動きは一時的なものではなく、韓流の中心がドラマから音楽(K-pop)に移ったように少しずつ形をかえて継続している。
一方で、中韓台では90年代以降、J-popや小説・アニメなど日本の大衆文化がブームとなり、最近でも村上春樹の小説が各国でベストセラーになるなど、「日流」とよぶべき現象があらわれている。
ヒト・モノ・資本がかつてなかったほど大量に、スピーディに国境を越える時代にあって、それぞれの文化が他の文化圏で受容され、各地の文化と交流しつつ融合・反発しながら新たな文化を創造していく、グローバル化現象の一側面としての「文化のハイブリッド化」の過程と見なすことができるだろう。
本書は現代東アジアのダイナミズムをめぐって、「文化交流」という観点から、 東アジア、とりわけ韓国を中心とした各地域・分野・時代を専門とする論者がその諸相を論じるものである。
今日の文化交流はもちろん、戦前期さらには前近代をふくむその前段階にも目を向ける。これをつうじて、韓国を中心とした現代東アジア文化交流の過去・現在から東アジアの未来を見据え、今日の文化交流がもつ可能性と限界について考える。