英国の出版文化史の考証から、作家と読者の相互関係に迫る
18世紀中頃から識字率が上昇し、それに比例して趣味としての読書が流行した。
英国ロマン派を代表する詩人ワーズワスとコウルリッジの共同詩集『リリカル・バラッズ』は、そんな読者が増大する変革期の作品である。
読者を支えた読書施設や出版事情等の文化史的考証をふまえて、詩人ワーズワスと当時の読者の相互影響関係を探る。
ウィリアム・ワーズワス(William Wordsworth)とは…
1770年4月7日―1850年4月23日。英国ロマン派を代表する詩人で、後世の詩人・作家にも多大な影響を及ぼした。
産業革命とナポレオン戦争の一大変革期を生き抜き、晩年にはヴィクトリア女王から桂冠詩人に叙せられた。変転する時代の中で見失いがちな、人間性と社会のあり方を、自然とのかかわり方や想像力の役割を中核にして提示する作品を主に残した。
代表作に『リリカル・バラッズ』、自伝的長詩『序曲』、『逍遥』がある。日本には、明治時代に紹介され、国木田独歩をはじめとして多くの詩人や作家が影響をうけた。