七絃琴の日本における受容を詳述したはじめての通史
中国の無形文化遺産・七絃琴(古琴)は、「君子左琴」「右書左琴」と称される君子の楽器である。琴は奈良時代に伝来し、『うつほ物語』や『源氏物語』などの古典文学でも主人公の携行する楽器として描かれている。また、「琴棋書画」として日中の文人に愛好されたことも広く知られているが、これまで体系的に享受史が解明されたことはなかった。
日本人は琴をどのように受容し、いかなる音楽文化を形成したのか。また、日本文学にいかなる影響を与えたのか。
「伯牙絶弦」「知音」の故事でも知られる琴および琴曲の実態、古典文学をはじめ中・近世の漢詩文や近代文学への影響、中国および日本の禅僧や文人ら、我が国の琴人の系譜と王朝物語の音楽伝承の生成過程を中心に、古楽譜や楽書などの文献史料や絵画資料も用いてその特質を明らかにする。