一次史料に基づくナチスのユダヤ企業政策研究
ユダヤ人政策を社会経済的観点から追究し、職業官吏制度再建法やニュルンベルク法、ユダヤ人居住地が次々と襲撃・放火された「水晶の夜」に新たな解釈を提起。
経済の脱ユダヤ化(アーリア化)政策に関する初の研究書。
推薦のことば
本書は、戦争と大量殺害が始まる少し前のドイツで、「経済の脱ユダヤ化」が経済社会をいかに変容させ、どのような問題を引き起こしていたかを問うている。ここで明らかになるのは、戦争統制経済の早期確立を謳う「四か年計画」の強い圧力の下、経済合理性の追求と反ユダヤ主義の貫徹という相矛盾する原理の間で身動きがとれなくなったナチ体制の現実だ。この危機的状況を国家的テロによって打破する試みが「水晶の夜」であった。
反ユダヤの外見を纏いながら、結局は「全ドイツ人の抑圧と隷従」に帰着した「経済の脱ユダヤ化」の全体像が、本書を通じて初めて浮き彫りになった。膨大な史料渉猟と明確な問題意識に支えられた本格的実証研究の傑作である。
石田勇治(東京大学大学院教授、ドイツ近現代史)