アジア遊学290
ジョセイノチカラカラレキシヲミル

女性の力から歴史をみる

柳田国男「妹の力」論の射程
永池健二 編
ISBN 978-4-585-32536-9 Cコード 1339
刊行年月 2023年11月 判型・製本 A5判・並製 280 頁
キーワード 民俗学,宗教,日本史,近現代

定価:3,300円
(本体 3,000円) ポイント:90pt

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書籍の詳細
ジェンダー論から人間論へ

女性の霊的な力や心的な影響力の意義を論じた柳田国男の「妹の力」論。この思想は戦前戦後の民俗学の主要なテーマの一つとして展開されてきたが、近年、女性史・女性学研究の立場からさまざまな批判が繰り返されている。家庭内での女性の大きな役割や、その前提となる女性の男性に対する霊的優位性を否定し、「妹の力」の歴史的存在そのものをも認めまいとする主張もある。しかし、必ずしも柳田の主張が正しく理解されてきたとはいいがたい。
柳田は「妹の力」にどのような意図や主張を込めたのだろうか。
改めて時代状況のなかに置き直して考察するとともに、沖縄の「オナリ神」信仰や女性祭司と巫女、遊女、長崎のかくれキリシタン、中国古代の敦煌など、時代地域を異にする女性たちが担った独自の信仰の事例を多数提示し、女性の霊的な優位性を再検証する。
「妹の力」を男女の関係や現代社会のあり方を捉えなおす視座として提示するとともに、個人的な生にとって意義のある歴史の構築を目指した柳田国男の民俗学を問い直す画期的成果。

 

 

目次
序言 いま、なぜ「妹の力」なのか 永池健二
総論「妹の力」の現代的意義を問う 永池健二

第Ⅰ部 「妹の力」とその時代―大正末年から昭和初年へ
「妹の力」の政治学―柳田国男の女性参政論をめぐって 影山正美
柳田国男の女性史研究と「生活改善(運動)」への批判をめぐって 吉村風

第Ⅱ部 霊的力を担う女たち―オナリ神・巫女・遊女
馬淵東一のオナリ神研究―オナリ神と二つの出会い 澤井真代
折口信夫の琉球巫女論 伊藤好英
地名「白拍子」は何を意味するか―中世の女性伝説から『妹の力』を考える 内藤浩誉
[コラム:生きている〈妹の力〉1]民俗芸能にみる女性の力―朝倉の梯子獅子の御守袋に注目して 牧野由佳
[コラム:生きている〈妹の力〉2]江戸時代の婚礼の盃事―現代の盃事の特質を考えるために 鈴木一彌

第Ⅲ部 生活と信仰―地域に生きる「妹の力」
くまのの山ハた可きともをしわけ―若狭・内外海半島の巫女制と祭文 金田久璋
長崎のかくれキリシタンのマリア信仰 松尾恒一
敦煌文献より見る九、十世紀中国の女性と信仰 荒見泰史

[コラム:生きている〈妹の力〉3]母親たちの富士登山安全祈願―富士参りの歌と踊り 荻野裕子
[コラム:生きている〈妹の力〉4]女たちが守る村―東日本の女人講 山元未希

第Ⅳ部 女の〈生〉と「妹の力」―生活から歴史を眼差す
江馬三枝子―「主義者」から民俗学へ 杉本仁
「妹の力」から女のための民俗学へ―瀬川清子の関心をめぐる一考察 加藤秀雄
「女坑夫」からの聞き書き―問い直す女の力 川松あかり
高取正男における宗教と女性 黛友明
[コラム:生きている〈妹の力〉5]「公」と「私」と女性の現在 山形健介

「妹の力」をめぐるミニ・シンポジウムの歩み
プロフィール

永池健二(ながいけ・けんじ)
柳田国男研究会会員。専門は日本文学、歌謡史・歌謡文芸の研究、柳田国男論。
主な著書に『柳田国男 物語作者の肖像』(梟社、2010年)、『逸脱の唱声 歌謡の精神史』(梟社、2011年)、『梁塵秘抄詳解 神分編』(編著、八木書店、2017年)、論文に「柳田国男はなぜ『遠野物語』を書いたのか」(『現代思想』50-8、2022年7月)、「志多良歌考―志多羅神の東遷とその「童謡六首」についての歌謡史的考察」(『歌謡 研究と資料』14号、2022年10月)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「福井新聞」(2024年2月9日、16面「文化・生活」欄)にて紹介されました。

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