アジア遊学297
ハイキョノブンカシ

廃墟の文化史

木下華子・山本聡美・渡邉裕美子 編
ISBN 978-4-585-32543-7 Cコード 1391
刊行年月 2024年10月 判型・製本 A5判・並製 288 頁
キーワード 建築,美術,文化史,古典

定価:3,300円
(本体 3,000円) ポイント:90pt

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書籍の詳細
「廃墟」とは何か

近代産業遺産、廃業した遊園地やホテル、廃村や廃校など、現代において「廃墟」はたびたびブームとなり、人々の心を強く惹きつける。
そしてひとたび、古典の世界に目を向ければ、古都や古代寺院の遺構、絵画・記録・物語や伝承などに遺された荒廃した町並みや建造物など、さまざまな廃墟表象が見いだせる。
「廃墟」はなぜ描かれ、語り継がれたのか。
そこにはどのようなイメージ、意図が込められていたのか。
人々は「廃墟」に何を託したのか―。
これまであまり考察されることのなかった、日本の廃墟表象を捉え直し、文学・美術・芸能など様々な視点から、古代以来連綿と人々が廃墟と共存した様相や、廃墟が文化の再生・胚胎を可能とする機能的な場であることを明らかにする。
日本の歴史・文化史に立脚した廃墟をめぐる新たな視座を提供する挑戦。

 

 

目次
カラー口絵
巻頭言 わたしたちの廃墟論へ 渡邊裕美子

第1部 廃墟論の射程
「廃墟」の創造性─歌枕・紀行文・『方丈記』 木下華子
『うつほ物語』の廃墟的な場─三条京極の俊蔭邸と蔵の意義 陣野英則
廃墟に花を咲かせる―『忍夜恋曲者』の方法 矢内賢二
西洋美術史における廃墟表象―人はなぜ廃墟に惹きつけられるのか? 平泉千枝
【コラム】前近代中国における廃墟イメージ―読碑図・看碑図・訪碑図など 板倉聖哲
言葉としての「廃墟」―戦後文学の時空 藤田佑

第2部 廃墟の時空
廃墟と霊場―闇から現れるものたち 佐藤弘夫
廃墟と詠歌―遍照寺をめぐって 渡邉裕美子
夢幻能と廃墟の表象―世阿弥作《融》における河原院描写に注目して 山中玲子
【コラム】生きた廃墟としての朽木—風景・記憶・木の精 ハルオシラネ
廃墟に住む女─朽ちてゆく建築と身体 山本聡美
廃墟と、廃墟になれない町―永井荷風『祭の夜がたり』 多田蔵人
【コラム】韓国文学における廃墟 嚴仁卿
【コラム】西洋美術史から見た日本における廃墟とやつれの美 佐藤直樹

第3部 廃墟を生きる
【コラム】荒れたる都 三浦祐之
承久の乱後の京都と『承久三、四年日次記』 長村祥知
廃墟の中の即位礼―中世の即位図からみえるもの 久水俊和
五山文学における廃墟の表象 堀川貴司
戦争画家たち―それぞれの「敗戦」 河田明久
廃墟としての金沢文庫─特別展『廃墟とイメージ』の記録 梅沢恵

あとがき 木下華子
プロフィール

木下華子(きのした・はなこ)
東京大学 大学院人文社会系研究科准教授。専門は日本中世文学。
著書に『俊頼述懐百首全釈』(風間書房、2003年、共著)『慈円難波百首全釈』(風間書房、2009 年、共著)、『鴨長明研究 表現の基層へ』(勉誠出版、2015年)などがある。

山本聡美(やまもと・さとみ)
早稲田大学教授。専門は日本古代・中世絵画史。特に仏教説話画を通じて、死生観や贖罪の精神史を探求。博士(文学)。
主な著書に『九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史』(KADOKAWA、2015年、平成二十七年芸術選奨文部科学大臣新人賞・第十四回角川財団学芸賞を受賞、角川ソフィア文庫『増補カラー版 九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史』として2023年再刊)、『闇の日本美術』(筑摩書房、2018年)、『中世仏教絵画の図像誌 経説絵巻・六道絵・九相図』(吉川弘文館、2020年)などがある。

渡邉裕美子(わたなべ・ゆみこ)
立正大学文学部教授。専門は和歌文学・中世文学。
主な著書・論文に『新古今時代の表現方法』(笠間書院、2010年)、「『百人一首』と歌仙絵」(『百人一首の現在』青簡社、2022年)、「『毎月抄』の〈読者〉考」(『古典文学研究の対象と方法』花鳥社、2024年)などがある。

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