『源氏物語』は、書かれた言葉によってこの世に存在している。その言葉は、物語中の随所で、複雑にしてゆたかな意味を生成しているが、同時にそれは、単なる書き言葉ではなく、作中人物の発言あるいは心中の言葉、さらに物語を口頭で伝える人、それを書き取る人、書かれた言葉を書き写す人、編纂する人、……等々のさまざまな声が重なりあっている言葉として、異彩を放っているようにおもわれる。
それらのさまざまな声=「話声」から、『源氏物語』の言葉の魅力と特質とを解き明かしてゆく。
*本書は2004年刊行の『源氏物語の話声と表現世界』(ISBN:978-4-585-03123-9)の新装版です。