ドウテキシテンカラノニホンカンジオンシケンキュウ

動的視点からの日本漢字音史研究

石山裕慈 著
ISBN 978-4-585-38007-8 Cコード 3081
刊行年月 2025年10月 判型・製本 A5判・上製 432 頁
キーワード 国語学,日本語,言語

定価:12,100円
(本体 11,000円) ポイント:330pt

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書籍の詳細
日本語話者にとって、日本漢字音とはいかなるものであったのか

日本漢字音とは、単なる経年変化の中で受動的に採用されたものではなく、何らかの使用意識の下で、当時いくつか存した選択肢の中から自覚的・無自覚的に選択された結果のものである。
本書ではこの「動的」な一面に着目し、個々の資料に出現する漢字音を分析し、相互に比較・対照。
当時、どのような音が選択され、背後にどのような論理・力学があったのかを探り、中世以降の日本漢字音、すなわち日本語の漢字の音読みの歴史的変化について考察する。

 

 

目次
凡 例

序 章
1 本書の目的
2 日本漢字音史の概要
3 研究方法と本書の構成

第1部 中世日本漢字音の種々相
第1章 漢籍訓読資料における漢字音の実態(1)―『論語』の場合―
1 本章の目的
2 使用資料の概観
3 仮名音注の検討
4 声点と中古音との対応関係
5 『論語』古写本における釈文注の影響
6 同一箇所の声点の差異をめぐって
7 結論

第2章 漢籍訓読資料における漢字音の実態(2)―『荘子』の場合―
1 本章の目的
2 『荘子』の字音点の実態
3 注釈書の利用について
4 『荘子』の反切・同音字注と『経典釈文』との比較
5 仮名音注について
6 声点について
7 結論

第3章 漢籍訓読資料における漢字音の実態(3)―『遊仙窟』の場合―
1 本章の目的
2 使用資料と字音点の概要
3 『遊仙窟』に記入された字音声点について
4 反切・同音字注について
5 音合符の問題
6 結論

第4章 日本漢文における漢字音の実態(1)―『本朝文粋』の場合―
1 本章の目的
2 醍醐寺本『本朝文粋』の漢字音
3 『本朝文粋』における上声・去声間の声調変化についての一考察
4 結論

第5章 日本漢文における漢字音の実態(2)―『世俗諺文』の場合―
1 本章の目的
2 『世俗諺文』の呉音系字音について
3 『世俗諺文』における漢音形の特徴
4 『世俗諺文』における漢音声調の特徴
5 結論

第2部 「漢語音」の視点から見た日本漢字音の変化
第1章 呉音字音直読資料における「漢語音」をめぐって
1 本章の目的
2 親鸞自筆『観無量寿経註』『阿弥陀経註』の声点の特徴
3 親鸞自筆『観無量寿経註』の字音声点から読み取れる日本語化の実態
4 字音直読特有の問題
5 その他の資料の検討
6 親鸞自筆『観無量寿経註』『阿弥陀経註』における声点の機能についての一考察
7 結論

第2章 片仮名交じり文における漢語声調―親鸞自筆『三帖和讃』の場合―
1 本章の目的
2 『三帖和讃』における二字漢語の声調について
3 『三帖和讃』における三字漢語の声調について
4 結論

第3章 漢籍訓読資料における漢語声調―『本朝文粋』の場合―
1 本章の目的
2 久遠寺本と醍醐寺本の声点について
3 五種類の『本朝文粋』巻六古写本における漢語声調
4 変化の方向について
5 結論

第4章 『四座講式』における漢語声調の変化
1 本章の目的
2 大慈院本「涅槃講式」の漢語声調について
3 使用資料とその系統関係についての概略
4 声点の相違についての考察
5 結論

第5章 『補忘記』の漢語アクセント
1 本章の目的
2 声点と節博士との対応関係について
3 日常漢語アクセントとの関係
4 結論

第6章 漢語声調・アクセント史研究をめぐる諸問題
1 本章の目的
2 様々な問題設定とその課題
3 研究の方向性
4 結論

第3部 漢字音の日本語化と学問的干渉
第1章 室町時代の『論語』古写本の清濁
1 本章の目的
2 清原家伝承資料の検討
3 その他の『論語』古写本における濁音
4 漢語単位での考察
5 結論

第2章 浄土三部経音義の漢字音
1 本章の目的
2 四種類の浄土三部経音義について
3 漢字音の異同について
4 呉音形の「整備」
5 結論

第3章 法華経音義におけるt入声字の表記―日本漢字音史資料としての側面から―
1 本章の目的
2 各種法華経音義の体裁と内容との関係
3 法華経音義におけるt入声字をめぐる問題
4 中世呉音資料におけるt入声字に関する議論
5 篇立音義における呉音形の特徴
6 結論

第4章 字音仮名遣いの整備と現状―豪韻字の場合―
1 本章の目的
2 豪韻の字音仮名遣いについての概略
3 江戸時代の研究とその深化
4 現代の漢和辞書の状況
5 結論

第5章 日本漢字音における「一字複数音」の歴史
1 本章の目的
2 「漢字音の一元化」―中近世の『論語』の漢音形を主な題材にして―
3 中世以降の「シュウ」「シュ」の呉音形をめぐって
4 結論

参考文献一覧
後書き
索引
プロフィール

石山裕慈(いしやま・ゆうじ)
1979年生まれ。京都府長岡京市出身、幼少期を鹿児島県川内市(現・薩摩川内市)で過ごす。東京大学文学部卒業、同大学院人文社会系研究科修士課程・博士課程修了(博士(文学))。弘前大学教育学部講師・准教授を経て、2013年より神戸大学大学院人文学研究科准教授。2025年10月より同教授。
専門分野は、日本語史(特に日本漢字音史)。主要業績は「貞享版『補忘記』の漢語アクセント」(『国語と国文学』85-3、2008年)、「『遊仙窟』各本に記入された日本漢字音の位置づけ」(『国語と国文学』90-7、2013年)、「『漢字音の一元化』の歴史」(『国語と国文学』95-10、2018年)(以上本書所収)、沖森卓也・肥爪周二編『シリーズ日本語ライブラリー・漢語』(朝倉書店、2017)、「日常使用の日本漢字音の歴史──『日葡辞書』と現代日用語辞典との比較を通して──」(『国語と国文学』99-9、2022年)、「『和英語林集成』第三版の漢字音についての一考察(『神戸大学文学部紀要』50、2023年)」など。

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