徳川幕府が開かれて近世という時代が始まり、それに応じて諸種の社会的変化が生じる中で、和歌もまた既存のあり方から大きくその内実に変容を来した。
堂上(とうしょう)・地下(じげ)を問わず、様々な人びとがそれぞれに多様な目的意識のもとに、多様な方法を用いながら、「歌道」という一つの世界に参画していく。
彼ら/彼女らは、なぜ和歌という表現手段を選び、詠出したのか――。
詠歌、歌学、和文、歌道伝授、古典研究などの営為を精緻に分析し、歌人それぞれの和歌活動における固有の動機を把捉。
和歌が開かれていった十七世紀という時代に和歌が持ち得た多様な意義を浮かび上がらせることで、人びとが文学といかなる関係を結んできたか/結びうるかを照らし出す意欲作。