一八八〇年代の日本は、江戸時代以来の整版印刷にかわり、活字を利用した活版印刷が広く展開していく時期であった。
活字印刷でありながら和綴じで製本され、時には錦絵の表紙で飾られた和装活版本、俗文学の新たな媒体となったボール表紙本、合冊を前提としたこより綴じの逐次出版物など多様な書型が生み出され、また、法制度の制定、新興業者の参入などが重なり、時代は混沌の様相を呈していた―。
この日本出版史における近代移行期に人びとはどのように対応していったのか。
共隆社や春陽堂など当時に勃興展開した版元の刊行書籍や関連資料を博捜・蒐集し、多角的な読み解きにより活字印刷黎明期の出版文化の有り様を通史的に描き出す意欲作!