コダイニホンノイブンカコウリュウ

古代日本の異文化交流

鈴木靖民 編
ISBN 978-4-585-10439-1 Cコード 3020
刊行年月 2008年2月 判型・製本 B5判・上製 704 頁
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定価:27,500円
(本体 25,000円) ポイント:750pt

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書籍の詳細

神信仰をはじめとする日本固有の思想・宗教などを、異文化交流の視角から捉え直し、日本文化を世界歴史の中に相対・客観化し位置付ける意欲作。

本書は、古代日本の神信仰、または神道を核とする信仰、宗教、それを具現する祭祀、儀礼など、日本の固有文化の歴史的特質に直接、間接につながる問題を取り上げ、全体として日本と東アジアの「異文化交流」というキーコンセプトを基本に据え、その視座に立った様々な分野からの学的アプローチによって実態と意義に迫る三七編の論文を集成したものである。
古代日本の神信仰と祭祀、それと密接に関連する仏教をはじめ、道教、陰陽道などの信仰、意識、その複合した宗教構造や歴史過程を主な対象とするのは当然であるが、隣接する中国、朝鮮半島、日本北方の各種の信仰や祭祀の事例をも多数取り上げており、総じて、本書は東アジアのなかの古代日本の神信仰、神の文化を論じた特色ある内容となっている。
古代日本の信仰、宗教に見られる文化のありかたを、異文化交流の視角から考えることの意義は二つあるであろう。一つは神信仰などを日本の原始社会以来の固有信仰、基層信仰として超歴史的に見なす嫌いのある現在までの歴史観、文化観に対して、歴史学的な立場、方法をもとに捉え直すことである。神信仰や神道の成立の研究は、神道史、神社史自体としても進めることももちろん可能であるが、神仏習合に典型的に見られる中世以降の神道の他宗教との共存や対抗の歴史に知られる通り、日本内部の異文化交流として、その成立、変遷、変貌の過程と要因、背景などを理解するほうが、むしろ神信仰、神道の特質を浮き彫りにし易いという側面がある。もう一つは、日本に接し、宗教文化の伝播などに多くの影響を及ぼした中国、朝鮮半島を含む、東アジア諸国、諸地域での信仰や宗教の史実を理解し、その交流史や比較史の観点によって、日本の宗教、ひいては文化全般の形成や構造の普遍性と特殊性を明らかにする端緒を掴むことができる。神信仰は東アジアの宗教世界だけでなく、世界各地の歴史的習俗として現在まで存在する。日本の神道文化を東アジアのみならず、世界史のなかに相対化、客観化して位置付けることができるのである。このような、神信仰、神道文化を歴史的コンテクストのなかで見通したり、あるいは東アジアのなかで位置付けたり、性格を論じたりする研究は、これまで意外なほど稀である。こうした課題に向かって、多様で豊富な基礎的事実を集積し、議論を組み立てる試みを、まず学界内外に呈示することが、本書を刊行する大きな眼目である。
本書の内容は多岐にわたり各論文間に不統一の感があるのを否めないが、ここに盛込まれた異文化交流史の多様性をふまえ、歴史学と関連諸学が提携しつつ学問体系化を目ざすことが次の課題である。おそらく日本史、あるいは古代史の分野で「異文化交流」と銘打った初めての成果であり、今後の日本とアジアの異文化交流史研究の進展のために、日本、海外の学界に発信され、貢献することを期待している。

 

 

目次
はじめに

第一篇 神祇・仏教の東アジア文化交流
第一部 国境をまたぐ神々と仏教
東アジア異文化間交流における山東の位置付け/馬一虹
九世紀山東における在唐新羅人社会の構造と儀式・言語―『入唐求法巡礼行記』を中心に―/中 大輔
赤山神について/塩沢裕仁
赤山明神と新羅明神―外来神の受容と変容―/菊地照夫
宗像社僧の写経活動と入宋/岡野浩二
高麗・宋の交流と禅宗/趙 明濟

第二部 東アジアと日本の信仰と交流
古墳時代の海上交通と信仰/椙山林繼
韓国扶安竹幕洞祭祀遺跡の文化複合―海辺と航海の祭祀―/高 慶秀
外来の護法神の神祇信仰に及ぼした影響―天台・真言の神々と八幡神―/岡田精司
東アジアにおける道教の伝播―漢字文化圏の展開のなかで―/増尾伸一郎
日本的信仰構造の成立と陰陽道/三橋 正

第二篇 古代日本の外来宗教と固有信仰
第一部 東アジアの境界祭祀と仏教信仰
国境・境界と文化形成/Bruce Batten 
魏晋南北朝期の東北アジア国家と仏教の伝播―異質文化接受の特徴―/宋成有 
日本列島北の古代辺境社会と祭祀・信仰/三浦圭介
古代日本の境界領域と能登/小嶋芳孝
古代日本と朝鮮の殺牛祭祀・漢神信仰/鈴木英夫
古代朝鮮の殺牛祭祀と国家形成/李 成市
古代日本の境界意識と仏教信仰/三上喜孝

第二部 古代・中世の固有信仰と外来宗教
古ノルド語圏の信仰とキリスト教/Ulf Drobin
韓国の原始宗教と仏教/徐 永大
古代北海道の無文字社会と文字・記号、そして信仰―擦文社会と異文化間交流―/鈴木靖民
日本古代の神信仰の展開と仏教信仰/鈴木靖民 
中世における禅宗の輸入と「日本化」/村井章介

第三篇 古代朝鮮の前方後円墳と日本の古墳文化
栄山江流域における前方後円墳からみた古代の韓半島と日本列島/朴 天秀
韓国古代における全羅道と百済、加耶、倭李/鎔賢
韓国の前方後円墳と九州/柳沢一男
肥後と北部九州の横穴式石室とその系譜/古城史雄
西九州古墳文化とその特質/木恭二
前方後円墳をめぐる韓と倭土/生田純之
韓国の前方後円墳と倭の史的動向/鈴木英夫
栄山江流域慕韓説の研究史的検討/近藤浩一 
韓国栄山江流域 古代史関係文献目録(稿)/近藤浩一
「古代九州の古墳文化と韓国の前方後円墳」関係論文(日本語文)目録(稿)/新井隆一

第四篇 渤海・新羅の交流と文化
渤海と新羅の交流/韓 圭哲
渤海文化の二重的特徴―靺鞨と高句麗の異文化交流を通して―/李 宗勲 
『金液還丹百問訣』にみえる渤海商人李光玄について―日本渡航問題を中心に―/石井正敏
加耶滅亡前後の新羅と倭の交流宣/石悦
八・九世紀東アジアの外交と大宰府―渤海と統一新羅を中心に―/朴 真淑
唐の国際交易と渤海―朝貢・互市と貢献制―/石見清裕

あとがき 

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