「何も心配ないからね。眠りたいだけ眠りな。何も心配ないから」
中国から帰還した父のこと、病の床にある母のこと、仏の教え、自然の叡知、そして多くの友のこと……。
生命の重み、人の救い。急逝した著者が残した最後のメッセージ。
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ホスピスの闇の中にいる人は、たとえ同じ病気にかかっているとしても、ほんの少し前を歩いて背中を見せてくれる人に救われる。
病気を治癒してそんな状態から脱出した人が最高であるが、それは望むべくもないとしたら、共通の時間を生きて、死に方を見せてくれる人であろう。
それならば私にもできる可能性はある。人を救うには、自分は安全なところにいて手を伸ばしても駄目なのである。
自分も同じ場所にいくのが望ましいが、同じように病気にはなれない以上、そばにいてやることである。(本文より)