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源氏物語の話声と表現世界

陣野英則 著
ISBN 978-4-585-03123-9 Cコード
刊行年月 2004年10月 判型・製本 菊判・上製 400 頁
キーワード 中古,古典,言語

定価:13,200円
(本体 12,000円) ポイント:360pt

 品切 
書籍の詳細

『源氏物語』は、書かれた言葉によってこの世に存在している。その言葉は、物語中の随所で、複雑にしてゆたかな意味を生成しているが、同時にそれは、単なる書き言葉ではなく、作中人物の発言あるいは心中の言葉、さらに物語を口頭で伝える人、それを書き取る人、書かれた言葉を書き写す人、編纂する人、……等々のさまざまな声が重なりあっている言葉として、異彩を放っているようにおもわれる。
本書では、それらのさまざまな声を「話声」と呼ぶ。そして、右に述べたような『源氏物語』の言葉の魅力と特質とを解き明かしてゆくことを最大の目的とする。
まずは、『源氏物語』の言葉に対してわれわれがいかに向きあうべきなのか、という基本姿勢を確認する必要があろう。具体的には本書の序章において詳述することとなるが、端的にいえば、『源氏物語』という対象を前にして、二つの異なる視座を設定することが有効であろうと考えている。
一つは、『源氏物語』という書かれた言葉によって生成する世界を、完結したテクスト世界として受けとめた上で、その表現の諸相を丹念に分析・検討しつつ、それをふまえて物語世界をささえる論理を導き出さんとするものである。本書のⅠは、表現の諸相の分析・検討が中心となる。また、Ⅱでは、特に『源氏物語』のいわゆる第二部とその前後において、光源氏と、その周辺のさまざまな人物たちとの関係性に留意しつつ、物語世界の論理を明らかにすることをめざす。
もう一つの視座は、物語世界の内部にとどまることなく、『源氏物語』という〈書かれたもの〉としてのありようを根源的に考えようというものである。すなわち、積極的に物語本体の外へと視界を拡げ、内と外との照応関係に注目してゆくのである。本書のⅢにおいては、『源氏物語』を創作した物語作家、またその物語作家が記した『紫式部日記』、さらには『源氏物語』を書写した人々のことなどが考察の対象として加わる。
本書は、おおよそ右のような内容をもつ。これを換言するならば、『源氏物語』の物語世界の読解を目的とする章を含みもちながらも、全体としては、『源氏物語』という物語の言葉、その存在様式をめぐる考察を志向するということである。
(はしがきより)

 

 

目次
はしがき
凡 例
序 章 『源氏物語』の言葉といかに向きあうか


Ⅰ 『源氏物語』の話声

第一章 作中人物の話声と〈語り手〉
    ―重なりあう話声の様相―

第二章 『源氏物語』古注釈における本文区分
    ―『光源氏物語抄』を中心に―

第三章 『源氏物語』の〈語り〉の本性
    ―作中人物どうしの話声の重なりあい―

第四章 女房の話声とその機能
    ―「末摘花」巻の大輔命婦の場合―

第五章 〈語り手〉の待遇意識
    ―貴公子に対する待遇表現―


Ⅱ 光源氏をめぐる〈語り〉―第二部とその前後―

第六章 光源氏をもどく鬚黒
    ―出来損ないの〈色好み〉が拓く物語世界―

第七章 六条院世界をみつめる明石の君
    ―明石の尼君の待遇表現の分析から―

第八章 秋好中宮と光源氏
    ―第二部における二人の関係性をめぐって―

第九章 六条御息所の死霊と光源氏の罪
    ―死霊の語った言葉の分析から―

第十章 「柏木・女三の宮事件」後の〈語り〉
    ―薫誕生と女房たちの沈黙―

第十一章 光源氏の最後の「光」
     ―「幻」巻論―

第十二章 「光源氏の物語」としての「匂宮三帖」
     ―「光隠れたまひにしのち」の世界―

Ⅲ 『源氏物語』の話声と〈書く〉こと―物語世界を超えて―

第十三章 紫式部という物語作家
     ―物語文学と署名―

第十四章 物語作家と書写行為
     ―『紫式部日記』の示唆するもの―

第十五章 『源氏物語』と書写行為
     ―書写者の話声―

第十六章 『源氏物語』と唐代伝奇
     ―物語伝承の仮構の方法―

第十七章 『源氏物語』のヘテロフォニー
     ―重なりあう話声と〈読む〉こと―

初出一覧

あとがき

索 引
Ⅰ 事項・人名・書名等索引
Ⅱ 『源氏物語』作中人物名・巻名等索引

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