時を隔ててもなお読まれるべき、重要な論文を大胆に収録。
各巻ごとに全体の「総説」、各論文を読み解く「解説」及び「研究史の総括と展望」を附し、これまでの研究成果を整理、今後の新たな展望を示す。
第1巻では、「主題」とは何か、という物語を読み解く根源的な問いを根本から再検討する。
第1部 多様な「主題」論
物語の「主題」論は、論者個々の読書行為の所産である。作者は『源氏物語』の世界を通して何を語ろうとしたのか? テクストの生成された時代の後宮、儀礼史から見た『源氏物語』論、庭園を仙境に見立てる漢詩文と物語叙述との連関を論ずることもまた「主題」論と呼び得よう。楽の音の相承から錯綜する血脈を照らし出す「主題」論、「もののけ」「人笑へ」「音」「救済」の「主題」論等、様々な相貌の「主題」論を読む。
第2部 「主題」論への懐疑
文学の「主題」とは、そもそもア・プリオリにあるのか?
『源氏物語』こそがこうした問いへといざなってくれる。かつて本居宣長は「もののあはれ」なる「主題」を論じたが、近代以降の秀逸な『源氏物語』論は、先行する「主題」論への根源的な問い、もしくは懐疑を有していたのではなかったか。成立論の先蹤とされてきた和辻論文をもそうしたコンテクストの中でとらえなおした上で、その時々の「主題」論の先端をおさえてゆく。