聖俗両社会を結びつけた密教の祈祷、修法はいかなる仕組みで勤修され、継承されていったのか――
中世において密教の修法は、現世利益を求める公家・武家の要請によって盛んに勤修されてきた。本書は、真言密教を伝持する醍醐寺に伝わる聖教を主に活用し、修法勤修と相承の仕組みについて「修法論」「法流論」「史料論」という三つの柱に基づき考察したものである。
第Ⅰ部では、修法を実現するための諸要件について検討し、第Ⅱ部では真言密教の中核的法流たる三宝院流の存続を支えた修法とその相承の実態に迫る。第Ⅲ部では、修法の勤修と相承の場で生み出された史料の性格や機能を考える。聖教の「中身」にふみ込み、社会史的な観点で真正面から修法をとらえた研究である。