日本最古の物語文学を妙なる絵画表現と優美な筆跡で愉しむ。
◆本集成の特色
九曜文庫所蔵の優品から、第一期として、特に美術的・歴史的価値を有し、また物語としても著名な大型絵巻を取り上げ、原本の全部分をフルカラーで影印。
原本と対照して物語を容易に読み進められるよう、詞書の影印の下に対応する釈文・注釈を掲載。変体仮名の連綿体を読み解くための入門書としても最適。
最新の研究成果を盛り込んだ充実した解説を収載。
高精細の製版・印刷技術を駆使し、絵や詞書きの細部に亘る描写や筆致、そしてその時代性を克明に再現した。
製本は見やすさと堅牢性を考慮し、糸かがり、上製クロス装とした。
◆竹取物語絵巻
写本。江戸初期(寛文。延宝ごろ)写。大型巻子装三軸(上 三二・五×一二八四センチ、中三二・五×一三〇五センチ、下三二・五×一三二三センチ)。二重箱入りで、中箱は黒漆塗り、外箱も黒塗りの桐箱で、蓋上に銀泥で「竹取物語 御證物三巻」とある。しかるべき高貴な家に伝領されたものであろう。
表紙は暗緑色の地に銀の牡丹唐草の緞子装。題簽は金箔の短冊に本文と同筆で「竹とり物語上(中・下)」とある。見返しは布目の金箔、八双は竹、巻緒は八ミリ幅の蘇枋色の平緒で長さ九八センチ、軸頭は直径二・五センチの象牙、いずれも原装。
本文料紙は、金泥で雲霞。遠山。草花などを下絵に描いた上質の鳥の子紙、紙背は金切箔を散らした雲母引き。内題はなく、尾題、奥書、識語の類もない。
絵は、上巻六図、中巻七図、下巻五図の計十八図。このうち九三センチにもわたる長大な絵が、上巻に一図、下巻に二図含まれている。天地の雲に金切箔砂子を散らし、人物の衣装や室内の調度などにも金彩を多用した豪華絢爛たる極彩色の大和絵で、画風は土佐派である。『竹取物語』の絵巻や奈良絵巻の伝本は決して少なくないが、その中にあって本書は、概して描かれている人物が多く賑やかで、管見では他に例を見ない。
本文は古活字本系統で、伸びのある優雅な筆跡で、『竹取物語』の本文をそのまますべて収録している。江戸時代以前に遡る写本のほとんど無いこの物語の本文資料としても貴重な価値を持つものと思われる。
絵・書双方の質を鑑みても、この種の奈良絵巻としては最上の部類に属するものと思われる。(パンフレットより)