オキナキュウイントイミンシャカイ1907−1924

翁久允と移民社会 1907-1924

在米十八年の軌跡
逸見久美 著
ISBN 978-4-585-05068-1 Cコード
刊行年月 2002年11月 判型・製本 四六判・上製 400 頁
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定価:3,960円
(本体 3,600円) ポイント:108pt

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書籍の詳細

一九〇七年、翁久允は一九歳で単身アメリカへ渡り、西海岸で様々な労働に従事しながら、日系新聞に数多くの小説を発表する。その作品群は異国に生きる日本移民達の人生を活写する「移民地文芸」と呼ばれるものであった。久允はその先駆者をもって自ら任じる一方、一九一一年のワシントン会議では日系新聞の記者として活躍するなど、自在な言論活動を展開する。戦前戦中の言論・思想統制が厳しかった時代にあって、コスモポリタンとして思想し、発言しようとした若き日の翁久允の姿、そして当時の移民社会のありかたは、現代国際化社会の問題点を予言し、象徴していた。様々な国情が複雑に交錯する現代から振り返ってみれば、翁久允の思想と行動、異文化交流・集団の中の個を描いた「移民地文芸」の構想は、まさに先駆的であった。久允の愛娘によって書かれた本書は、亡父を描くことで、その遺志を継ぎ、「移民地文芸」の精神を形を変えて現代に蘇生させた。

 

 

目次
少年時代
  生いたち 
  小学校から富山県立第一中学へ 
  初恋 
ある糞尿譚
  事件 
  その後、わが家に戻って 
  復学を夢見て 
  夢破れて、富山を後に 
上京して
  憧れの東京へ(一九〇五年) 
  中川幸子という女性―三省学会 
  日比谷の焼打ち事件 
  兄弟喧華から渡米を決意 
  故郷の人々 
  雪の常願寺川 
  お伊勢参りとよき子への誓い 
  大杉栄と堺枯川夫人 
  母帰る
  さらば、日本

第二章 シアトル時代
渡米して
  ビクトリアに寄港して
  シアトルに上陸して
  故郷の友だち、初めての労働
  大陸の亡者たち
  シアトルの日本人社会
  初めての家事労働―白人の家
  新亡者たちの生活
  読書のよろこび
  よき子の幻
  白人の家を追われて
労働に馴れて
  盗難、全身丸裸
  ホテルのボーイとなって
―また盗難
  母とよき子の死
  独身の男たち

第三章 ブレマートン時代
世界の移民地ブレマートンへ
  小説「別れた間」二等入選
(「旭新聞」一九〇九年新年号)
  移民地文芸設立
  シアトル文壇における六渓山人論
  デートン家から崖上の家へ
  スクールボーイとなって
  日本人とは
  アンダーソン夫人
  病院に勤めて
  ユニオン・ハイスクールへ
  偽善的根性の日本人
再びシアトルへ
  「シアトル」とは
  キング街の魔窟へ来て
  ブレマートンへ戻って
  移民女の悲劇
  「破魔子」事件
  長谷川天渓を迎えて
  移民地の女と文士劇

第四章 ポートランドからアストリアへ
シアトルからのがれて
  傷心の果て
  アストリアのキャンプ生活
  佐藤との出会い

第五章 再びブレマートンへ
作家志望を抱いて
  移民地の老女
  国際結婚とは
  お秀への思い
シアトルからタコマへ
 亀谷荻骨と清沢洌
  小説「三百十二番」一等入選
世界の移民
  日本人社会
  邦字新聞の記者たち
  お秀との別れ
いちごの島へ
  小説『道なき道』
  東郷家の人々―一つの恋

第六章 一時帰国して
わが家を憂慮して
  母国観光団に加わる
  故郷に戻って
  石黒清子との出会い
  結婚
  善光寺参り
  日本の文壇へ初登場
   ―「帝国文学」に小説四篇
  船上での回想

第七章 帰米して、シアトル時代
執筆断念
  転身への決意
  古屋商会に働く
  下積生活の日々
  浜子とお秀

第八章 シアトル時代
再び筆を執る
  ジャーナリストを目指して
  清子からの便り、古屋との別れ

第九章 スタクトン時代
ジャーナリストとなって
  サンフランシスコに着いて
  スタクトンへ―佐伯便利社に
  派閥―林甚之蒸派と赤羽亥之助派
  進歩派安孫子久太郎と
   保守派牛島謹爾の対立
  ヨネ野口とウォーキン・ミラー
  長編小説「悪の日影」を
   「日米」に九十九回連載
  移民の花嫁―写真結婚
  清子いよいよ上陸して
  日米親善とは
―牛島謹爾と安孫子久太郎
  移民文学の使命
   ―「紅き日の跡」を巡って
  移民らの不自然な生活と異様な道徳
  世界大戦と在米同胞社会
  日本人会の書記となって
  暴力沙汰―「スタクトン・タイムス」
  笑劇「八百弗問題」―「呼び寄せ証明書」  
   をめぐって
  早川雪洲の映画「チート」への総攻撃―
   排日活動写真として
  移民時代から移住民時代へ―延期された
   徴兵猶予

第十章 サクメントのフロリンへ
創作をめざして
  長女みちこ三千子誕生
  フロリンの排日運動
  シアトルにおける太田房次郎事件
  三千子の死、そしてオークランドへ

第十一章 オークランドへ
活躍する久允
  日本人会幹事となって
  ロサンゼルスに着いて
―南国的雰囲気
  俳優早川雪洲を訪ねて
  伸びゆく日本人社会
  日本人のつける漢語の地名
  ウィルソン大統領の民主主義
  日本官吏の官尊卑民思想、オークランド
   日本人会
  東部の西ヴァージニア州への労働
  戦時下に於けるアメリカ人の国民感情
  シベリア出兵と越中女一揆(米騒動)
  赤十字社運動に参与して
   ―日本人花園業者の協力を得て
  国旗を掲げて米兵に叱られる
  「日の丸」とは
  排日の原因―軍閥の無知
安孫子久太郎の訪問
  日米新聞社からの誘い
  写真結婚禁止と移民社会の対立
  安孫子と牛島―日本軍部の台頭
日米新聞社オークランド支社へ
  帰国を断念す
第一次世界大戦終結
  七面鳥の風刺画
   ―久允の書いた「日本」の記事
  第一次世界大戦後の日本
  西園寺公望の渡米
   ―講和会議の首席全権として
  自称コスモポリタン―ウオートン
  風来坊来訪
―上山草人・山川浦路夫妻
  呼び寄せ青年と二世―「親殺し」「日本人
   の子」上演
  片山潜と鷲津尺魔
  戦後の排日と世界情勢
  日本の皇太子の渡英をめぐって
  原敬内閣総理大臣暗殺
  島田清次郎との対面
  長男宣の誕生と父性愛

第十二章 ワシントン会議
日米記者として
  特派員となって
  留守を草人と浦路に託す
  懐かしのシアトルへ
  田村俊子を訪ねて
  シアトルからシカゴへ
  ニューヨーク入り―「二十五弗で買った      
   ニューヨーク入洋区の島」
  ワシントンに着いて
―首相暗殺の悲しみ
  徳川公爵
  ワシントン会議全権大使幣原喜重郎
  もう一人の全権大使の加藤友三郎
  ワシントン会議に出席した
新聞記者たち
  政友会の横田千之助と
   全権大使植原悦次郎
  ワシントン会議における
全権たちの周辺
  横田千之助の失敗
  「時事新報」の第一打電
   ―「四ケ国条約」の秘密を流す
  ワシントン会議に関わる記事

第十三章 会議を終えて
文学者としての根性
  「日米」新聞社内の雰囲気
  安孫子社長の理想論、草人との友情
  日本海軍に対する、
   五・五・三比率への欝憤
  帰国を諦める
  処女出版として『移植樹』刊行
  親と子の対立
  戦後再び排日運動起こる
  将来への憂慮

第十四章 関東大震災おこる
戦後の情況
  日本救助へ出動
  虎の門事件
  尊敬すべきウィルソンと
レーニンの死
  父の病気と家庭内の悩み
  家督相続と帰国決意

第十五章 帰 国
日米新聞社退社
  無念がる安孫子社長
  いよいよ帰国
―徴兵猶予期限あと一年
  船上にて

あとがき

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