バクマツメイジノシャカイヘンヨウトシイカ

幕末明治の社会変容と詩歌

青山英正 著
ISBN 978-4-585-29196-1 Cコード 3095
刊行年月 2020年2月 判型・製本 A5判・上製 496 頁
キーワード 詩歌,明治,幕末,近代

定価:11,000円
(本体 10,000円) ポイント:300pt

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書籍の詳細
したたかな〈うたの力〉

社会的・文化的に最も劇的な変容を遂げた幕末明治期において、「詩」や「歌」なるものは、いかなる政治的社会的役割を担ったのか。これらの文芸ジャンルに何が期待され、その概念に託されたものは一体何だったのか―。
前近代以来継承された伝統文芸としての和歌、そして明治十年代に欧米詩の模倣から始まった新体詩の展開を、前近代から近代へと続く史的展開のなかに位置づけ、政治史や思想史・社会史・文化史など複合的な視点から、社会的行為としての文芸の営みを鮮やかに描き出す快著。

 

 

目次
まえがき

序 章
 一 本書の目的
 二 研究史の整理
 三 本書の方法①―近世と近代の連続性
 四 本書の方法②―政治的・社会的行為としての文芸
 五 本書の方法③―地域・社会階層・ジャンルの横断
 六 本書の構成

第一部 幕末明治の政治と和歌
第一章 孝明天皇と古今伝受―附・幕末古今伝受関係年表
 はじめに
 一 断絶した古今伝受
 二 伝受の空白
 三 万延元年の古今伝受
 おわりに
第二章 近世後期の和学における和歌と教化
 はじめに
 一 儒者による和歌の教訓的解釈
 二 宣長後の和学における教化の導入
 三 実用としての和歌
 おわりに
第三章 幕末の仙台における藩政と和歌―保田光則編『訓誡歌集』をめぐって
 はじめに
 一 光則の学問形成―漢学と和学と
 二 藩の文教政策と光則の文業
 三 『訓誡歌集』の概要
 四 男性向け教訓歌集としての『訓誡歌集』
 おわりに
第四章 国体と和歌―水戸藩による『明倫歌集』の編纂について
 はじめに
 一 勅撰集の夢
 二 体裁をめぐる問題―「勅撰之体」か「類題」か
 三 歌集の内容
 四 『訓誡歌集』との比較
 おわりに―流通の問題と併せて
第五章 教導職の万葉選歌―国民教化と和歌
 はじめに
 一 『名教百首』編纂の経緯
 二 万葉選歌としての特徴
 三 『明倫歌集』との相違
 おわりに―国民教化と和歌

第二部 〈草莽〉と和歌
第六章 連鎖する志―安政の大獄における水戸〈義民〉の詠歌
 はじめに
 一 幕末の水戸における〈義民〉の形成過程
 二 安政六年の〈義民〉
 三 〈義民〉の交友と詠歌
 四 述志の歌の連鎖
 五 〈義民〉のネットワーク
 おわりに
第七章 尊王攘夷歌の史的位置―『新葉集』受容と幕末の類題集
 はじめに
 一 幕末の『新葉集』受容―「忠義」の歌集として
 二 「異国船」はどう詠まれたか
 三 攘夷歌としての「異国船」詠
 四 攘夷歌の母体としての詠史歌と祝歌
 おわりに
第八章 志士の歌を読む
 はじめに
 一 歌語「かばね」の系譜
 二 歌語「やまとだましひ」の系譜
 三 「たましひ」の行方
 おわりに
第九章 幕末の志士はなぜ和歌を詠んだのか―漢詩文化の中の和歌
 はじめに
 一 志士の詩歌における尊王攘夷表現
 二 吉田松陰における天
 三 心を汲み取る神
 四 〈想像の君臣唱和〉
 おわりに
第十章 振気から教化へ―勤王志士詩歌集のゆくえ
 はじめに
 一 二つの『精神一注』―村井本から青柳本へ
 二 志士詩歌集における「文人詩客」
 三 国民教化との結びつき
 おわりに―志士詩歌集のゆくえ

第三部 新体詩と「歌」
第十一章 『新体詩抄』における「歌」
 はじめに
 一 「日本ノ詩」と「明治ノ歌」
 二 自然なものとしての「俗曲」
 三 「連続したる思想」の表現
 おわりに
第十二章 『新体詩歌』の出版を支えた人々
 はじめに
 一 竹内隆信について(その一)―来峡から『新体詩歌』の編纂まで
 二 竹内隆信について(その二)―『新体詩歌』の出版とその後の活動
 三 坂部広貫について
 四 首藤次郎および広瀬要人について
 おわりに
第十三章 近世韻文としての新体詩―『新体詩抄』と『新体詩歌』をめぐって
 はじめに
 一 七五調韻文の系譜
 二 『新体詩抄』と教訓和讃
 三 『新体詩歌』と近世七五調韻文
 おわりに
第十四章 七五調の幕末明治―今様評価の変遷と加藤桜老編『古今今様集』
 はじめに
 一 俗としての七五調
 二 五七調の相対化とその意義―長歌改良論争をめぐって
 三 加藤桜老『古今今様集』の位置
 おわりに
第十五章 与謝野晶子の星の歌―『みだれ髪』と土井晩翠
 はじめに
 一 晶子の初期歌篇における星
 二 藤村・晩翠から鉄幹・晶子へ
 三 『みだれ髪』と晩翠
 おわりに

終 章

あとがき
初出一覧
索 引
プロフィール

青山英正(あおやま・ひでまさ)
1972年生まれ。明星大学准教授。専門は19世紀の日本文学(特に詩歌)および文化。
著書に『幕末明治 移行期の思想と文化』(共編著、勉誠出版、2016年)、論文に「古典知としての近世観相学―この不思議なる身体の解釈学」(前田雅之編『もう一つの古典知』アジア遊学155、勉誠出版、2012年)、「与謝野晶子の星の歌―『みだれ髪』と土井晩翠」(鈴木健一編『天空の文学史 太陽・月・星』三弥井書店、2014年)などがある。

書評・関連書等

★書評・紹介★
「日本歴史」6月号(2021年6月)に書評が掲載されました
 →評者:盛田帝子(京都産業大学外国語学部教授)

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